第48回日本新劇製作者協会賞受賞!


戦後を代表する劇作家の精神の軌跡

――今、わたしたちに問いかける


宮本 研 エッセイ・コレクション 全4巻

1[1957―67]夏雲の記憶 

2[1968―73]〈革命〉――四つの光芒 

3[1974―81]中国と滔天と私 

4[1982―88]時を曳く  

 

宮本 研 著

宮本 新 編

 

◆ 判型:四六判・上製

◆ 定価:3,000円+税 

 (以上、各巻共通)

◆ 頁数:352~380ページ   

 

 

戦後を代表する劇作家である宮本研は、

岸田戯曲賞受賞の『日本人民共和国』などの《戦後史四部作》をはじめ、

『阿Q外傳』などの《革命伝説四部作》、田中正造を扱った代表作『明治の柩』など、

数々の傑作・名作劇を書き残した。

  

今、宮本研戯曲は、ふたたび演劇人たちから熱い注目を浴びている。

近年、その上演が相次ぐ。

 

その宮本研は、優れた劇作家であると同時にまた名エッセイストでもあり、

生涯に書き表したエッセイは優に500編を超える。

それらエッセイのほとんどを初めて本にまとめたのが、

この『宮本研エッセイ・コレクション』全4巻。

 

劇作・脚本等の創作作品以外で、雑誌、書籍、新聞、

公演パンフレット等に発表されたほとんどの文章を収録。

初出発表年ごとに四巻に分け、さらにテーマごとに章立てをして、

各章内は原則として発表年月日順に配列。

 

舞台を見てから読んでも、舞台を見る前に読んでも、

たとえ舞台を見る機会がなくても、

作者の豊かな精神の源流にたどり着ける。

 

 

*** 2023年の上演作品**** 

 

『反応工程』を俳優座が巡演中!

https://haiyuza.net/jyunen/hannokotei/

 

 

*** 2022年の上演記録**** 

6月に『美しきものの伝説』を新劇交流プロジェクト

(文学座、文化座、俳優座、民藝、青年座、東俳、青年劇場)により上演。

8月に「宮本研連続公演」の第一弾『夢・桃中軒牛右衛門の』、

10月に第二弾『美しきものの伝説』を、いずれも流山児★事務所により上演。

 

■著者紹介■

 

宮本 (みやもと・けん) 1926.12.2―1988.2.28

劇作家。熊本県生まれ。幼少期を天草、諫早で過ごし、1938年父親の勤務地の北京へ渡り、44年帰国。50年、九州大学経済学部卒業。高校教員を経て法務省に勤務。在職中に演劇サークル「麦の会」で作・演出等を担当、演劇界へ。62年に法務省を退職し、以後劇作家一本に。同年、『日本人民共和国』『メカニズム作戦』で第8回岸田戯曲賞、翌63年『明治の柩』で芸術祭奨励賞を受賞。

その他の作品に、『僕らが歌をうたう時』『人を食った話』『五月』『反応工程』『はだしの青春』『ザ・パイロット』『美しきものの伝説』『阿Q外傳』『聖グレゴリーの殉教』『櫻ふぶき日本の心中』『夢・桃中軒牛右衛門の』『からゆきさん』『ほととぎす・ほととぎす』『冒険ダン吉の冒険』『花いちもんめ』『ブルーストッキングの女たち』『次郎長が行く』『うしろ姿のしぐれてゆくか』など多数。『筑紫の恋の物語』(近松)、『雪国』(川端康成)、『嘆きのテレーズ』(ゾラ)などの脚色も。エッセイは500篇を超える。

 


 

 

 

            既刊

1[1957―67]夏雲の記憶 

 

 

 

 

◆発行:2017年12月

◆頁数:352ページ  

◆ ISBN978-4-87196-066-3 

 

 

戦後精神の光芒(帯背の言葉)

■帯の言葉■

 

戦後を代表する劇作家のもうひとつの「作品」集

 

 戯曲を書くということは、だれも使ったことのない、まったく新しいことばを発見するという仕事です。

 そこここにある、ありあわせのことばで人間や事件をえがいても、それだけでは作品とよべません。まったく新しいするどさやゆたかさをもったことばで現実がとらえられたときにはじめて、作品のなかの現実が日常のなかの現実を有効に破壊する力をもちます。それが作品です。

 みなさん、台本ではなく作品を書きましょう。            (本書「中国と滔天と私」より)

 

■もくじ■ 

  ⅰ

夏雲の記憶――O一等兵のこと/従心所欲……/作品について――『明治の柩』/明治のイメージ/西洋音楽を論じて作品の意図に及ぶ/こんな戦後/この作品の前後左右――『明治の柩』あとがきにかえて/わたしのミュージカル――『メカニズム作戦』の前後/『ザ・パイロット』の美学/夏/『僕らが歌をうたう時』あとがき

  ⅱ

大阪へ行って/永遠のしろうと――麦の会は何をやりたいか/職場演劇におけるドラマの問題/この停滞をどう破るか――職場演劇の現在地点/ともしび会のこと/労働者の文化創造活動/麦の会はこうして生まれた

  ⅲ

新劇マニュファクチュア論/発想のをどう破るか――実感的ドラマ論/民話劇考/戯曲を書く/歴史と劇について/現代演劇とリアリズムの諸問題/演劇と観客/祭りすてる/粧う・装う/戯曲/存在・時間・空間・ヴェトナム

  ⅳ

民話劇と現代劇とリアリズムすなわち「ぶどうの会」について/戯曲について/風雅な人たち/〝三島美学〟はどれほど有効か――『喜びの琴』上演と戦後の新劇界/福田善之についての走り書/さすらいの千禾夫さん/チェーホフとぼく

  ⅴ

ロマンティシズムとの出合い――斎藤茂吉『万葉秀歌』/教育とセンス/アイスバイン

  ⅵ

木下順二著『ドラマの世界』を読んで/『久保栄全集』第三巻――『火山灰地』他/『秋元松代戯曲集』/『久保栄全集』完結を機に/福田善之著『真田風雲録』/添田知道著『演歌の明治・大正史』/大島渚著『戦後映画・破壊と創造』――全映画状況への訴状/『井上光晴詩集』/中井正一著『現代芸術の空間』/山崎正和著『世阿彌』/木下順二著『冬の時代』/木村光一訳『ウェスカー三部作』――方法の変革への刺戟/岡倉士朗著『演出者の仕事』/H・キップハルト著『オッペンハイマー事件――水爆・国家・人間』/千田是也著『演劇入門』/竹内実著『日本人にとっての中国像』/岩淵達治著『ブレヒト』/新劇の心身にあたえる影響について――東京劇信をはじめるにあたって/主に『城塞』のこと/わかる芝居 わからない芝居/文学座分裂問題の意味/異端の季節/観客へのいらだち/モスクワ、プラハからの報告/東欧でみた『オッペンハイマー事件』/大衆に対する絶望とオプチミズムの方法――今村昌平『赤い殺意』

 

  あとがき……………宮本 新


 

 

 既刊

2[1968―73]

〈革命〉――四つの光芒

 

 

 

◆発行:2018年4月

◆頁数:352ページ  

◆ISBN978-4-87196-067-0 

 

 

民衆と劇の邂逅(帯背の言葉)

■帯の言葉■

 

……わたしにとっては、語るということはある種の軽挙であり、盲動である。沈黙の世界からはみ出すことによって手に入れるのは空虚でしかないからである。だから、わたしにとっては、書くという作業は絶えざる苦痛であり、不安であり、苛責であり、屈辱ですらある。しかし、にもかかわらず、なおかつ、語り、書くということは、わたし自身、たぶん、ひとたび口を開いてしまった人間にはもはや引き返すべき地点はなく、ないとなれば、こんどはもう、ひたすら語りつづけ、書きつづけることによってしか沈黙を取り戻すすべはないものと観念しているからにちがいない。    (本書「〈革命〉――四つの光芒」より)

 

 

■もくじ■     

  ⅰ

メッセージ/作品の前後/覚書/造反有利ということ/花柳の世界/いま〝水俣〟に――田中正造の叫び/四つの作品について/〈革命〉――四つの光芒/近松体験の収穫/革命伝説と現代/桃中軒牛右衛門/劇中劇という構造について/祭り――劇の原点/村と逆に、村に――鉱毒事件と田中正造/ブリューゲルと魯迅

  ⅱ

私はどのようにして日本語を学んだか/演劇にとって性とはなにか――ある問答/〝自明の論理〟をこえるむずかしさ/賞について/劇作について/批評について/国家と犯罪または芸術/言葉・意味・文章/「観客」または「大衆」について/民衆・ヒーロー・劇/まぼろしの劇場/KABUKI/わたしの反歴史劇/舞台空間への接近/後家が狂わにゃ芝居じゃない/網走番外地・考

  ⅲ

松井須磨子と中山晋平/島村抱月と小山内薫/明色の生感覚――天草/松井須磨子――史談・私を魅了した女性/田中正造と足尾銅山/青鞜の女/心中――考/松井須磨子――〝女優〟

  ⅳ

作家の生と死/〈桜が咲いて、冬でした〉/〈サンパ〉と〈ヤソ〉/小説・八木柊一郎/久保田万太郎とわたし/一期一会/男の世界・女の世界/大いなる遺産――久保栄・人と芸術/〈ウェスカー68〉について/ウェスカー68を――なぜ?/ウェスカーがのこしたもの/木村光一論/俳優石立鉄男/玲瓏玉のごとし――菅野忠彦/饒舌な世界を秘めた人――坂口芳貞/太地喜和子/夜の牙――李礼仙

  ⅴ

オレの新宿――シャツとボタン/アクション・オン・ステージ/解説(『現代日本戯曲大系』第3巻)/夢と現実――わたしの場合/原点としての八月/消えたセリフ

  ⅵ

独自な角度からの魯迅への接近――尾崎秀樹著『魯迅との対話』/切断された土着への回路――秋元松代著『かさぶた式部考・常陸坊海尊』/島・比喩と実在の間――安部公房『未必の故意』(俳優座)

 

  あとがき……………宮本 新


 

 

既刊 

3[1974―81]

中国と滔天と私 

 

 

 

◆発行:2018年12月

◆頁数:368ページ  

ISBN978-4-87196-068-7 

 

近代再考の視座(帯背の言葉)

■帯の言葉■

 

 少年だったとはいえ、侵略戦争下の中国に六年を過ごしたことの意味を、大げさにいえばそれこそ一日も考えないでくらすことはなかった戦後の三十年というものがわたしにはあり、だから中国のことについては書こうにも書けず、しかし書かずにはいられず、とうとう書いてしまい、そして晴れ晴れとした顔で中国の土地を歩いているわたしとはいったい何者なのか――旅の間じゅう、中国の人たちのあたたかさにつつまれながら、しかし、わたしの心はいつもどこかで冷えていた。   (本書「中国と滔天と私」より)

 

 

■もくじ■     

  ⅰ

兵士たちの物語/滔天とわたし/『夢・桃中軒牛右衛門』のあとがき/断片二、三/日記から/国境の長いトンネル/覚え書――補遺/そこからの出発、そこへの回路/注釈――二、三/「ダン吉」が選んだ冒険/マンガと実在の接点

  ⅱ

トンネルを過ぎれば雪国か!/革命の演劇と演劇の革命/新劇・その現在と未来/形姿と律/五体ために裂く

  ⅲ

亡国に至るを知らざれば即ち亡国――谷中村と三里塚/孫文と宮崎滔天/魯迅を読む/寒村さんのこと二、三/鹿鳴館と伊藤博文/昌平さんとの六年間/裏がえしの祝祭劇――ええじゃないか/こわれた時計のこと

  ⅳ

私小説・木下順二/巨大な矛盾律としての存在/一翻訳者としての駄弁/老舎のことなど/勉さんの芝居/父は永遠に悲壮である/運河のほとりで/女の中の女――新橋耐子/豪徳さんの情景――坂本長利/悼――小苅米晛

  ⅴ

フェアプレイはまだ早い/サクラサクラは死のサイン/勝馬投票初陣始末/悪魔はどこだ?/ホシはどこだ?/地下室のメロディー/十石峠にまぼろしを見た/WHAT DO YOU WANT?/ここまでの道/つきまとう影法師/あいまいな記憶/ゴリラのおはなし/風景としての寺/8・15と私の原理/南島小景/チャイルド・ハロルドの旅/中国と滔天と私/三十一年ぶりの北京/わが日録/わが日録(没原稿)/北京の秋/紹興の雨/もう一枚の地図

  ⅵ

偉大な革命家の壮大な生涯――『宮崎滔天全集』全五巻/転形期の肉体――花田清輝『ものみな歌でおわる』(木六会)る』(木六会)

 

  あとがき……………宮本 新


 

 

既刊

4[1982―88]

時を曳く 

 

 

◆発行:2020年5月

◆頁数:376ページ  

ISBN978-4-87196-069-4 

 

 

 

辺境からの出発(帯背の言葉)

■帯の言葉■

 

 石牟礼さんの作品なり文章なりを読んでいると、東京の浅ましさというか軽薄さというものがまざまざと浮かんできます。だから私は、ときどき読み返すことにしているんです。心が洗われるような感じになってくる。そして、自分が東京でやっている仕事、あるいは自分をとりかこんでいる東京の世界みたいなものがいかに軽薄で、まやかしで、インチキで、ツッパリで、言葉のあやだけでものを言ったり感心したり、人をだまして感心させたりしているかということが、よくわかるような気がするわけです。

(本書「演劇における辺境の意味」より)

 

■もくじ■     

  ⅰ

雪国―小説と劇との間山河慟哭ゾラを読む 彼らのあいだの屍漱石――わたしの場合男と女たちの物語/時代へのヒステリー/敗戦未然/叫び――ピアフの歌声/残侠の人/『明治の柩』――反近代への出発点/四十年目の夏――『ザ・パイロット』のこと/『ザ・パイロット』――未然形の物語として/山頭火への接近/作者としては/もうひとつの元禄

  ⅱ

高校演劇も演劇である/演劇における辺境の意味/笑いと諷刺/多幕物を書く

  ⅲ

ルイズさんの事/私の山頭火体験

  ⅳ

水上勉+木村光一/林黒土小論/魔術の人/見る――見られる/時代の花――片岡孝夫/星から来た人――金内喜久夫/写実の果てに――杉村春子/30.3センチメートル――織田音也

  ⅴ

諫早ひとり歩き/九州に酔う/海の見える風景/ごく私的なこといくつか/異形の者/会津の酒に酔う/生きとし生けるものの声/あの五年間のこと――「選考合評」一九六八~七二/ひと夏の夢ではなく/この手でわが青春の記念碑を――校史編纂についてのアピール/七年で消えた学校のこと/北京残影/追跡幻想/紹興にて/時を曳く

  ⅵ

活気あふれる『どん底』の住人たち――B.A.ギリャロフスキー著『帝政末期のモスクワ』

 〈補遺〉  

横光利一論/『赤い靴』を観て/西遊雑記一~四

 〈年譜・目録〉

 

  あとがき……………宮本 新

 

  著作品一覧

  各巻別作品一覧

  年  譜


『宮本研エッセイ・コレクション』の編者・宮本新氏が、第48回日本新劇製作者協会賞を受賞しました。2020年8月29日(土)、国立オリンピック記念青少年総合センターで授賞式が開催され、賞状と盾が手渡されました。

 授賞式後、「父・劇作家宮本研の視座―エッセイ・コレクションを刊行して―」と題する記念講演会が行なわれ、「父というより優れた作家として客観的に見てきた」という新氏にしか語れない宮本研像が浮かび上がってきました。

 講演後、日本新劇製作者協会前会長・水谷内助義氏は、「研さんのエッセイも圧巻だが、各巻にある新氏の『あとがき』にも感銘を受ける。特に、刊行まで時間がかかったが、最終巻の4巻の『あとがき』は、新さんの〝作品〟として胸打たれる」と話されました。