1949年、ジョージ・オーウェル『一九八四年』

1970年、山上たつひこ『光る風』

2014年、そして




クロニクル二〇一五




装画/入江比呂「食目人」(1979)



◆ 著 者 : 磯貝  治良
◆ 発行年月日:2015/06
◆ サイズ:四六判・上製
◆ ページ数:424ページ
◆ ISBN:978-4-87196-056-4
◆ 定価:2500円+税


■内容紹介■

これは現実<リアル>か虚構<フィクション>か

 

この不気味で息苦しく理不尽な今日を

15年前から予見していた

必然で終わりのない虚実交錯の物語

 

「正義と夢の探検隊」の老若男女7人が

徴兵制復活をことほぐイエロー国の片隅から

「秘密のアベッコちゃん」に徒手空拳で立ち向かう!

 

 文学/小説はどこまで政治に抵抗できるか? 坑道の地下深く分け入ってカナリアの役割を果たせるか? そんな問いがいよいよリアリティを帯びているのが、現今のこの国の政治状況のようだ。

 いきなりモノ言いがうわずってしまったが、大上段に振りかぶって言いたいわけではない。「政治と文学」論議とかアンガージュマンとかの古証文をことさらに持ち出したいわけでもない。せめて虚構の力による腕試しくらいはしたい。〝シュプレヒコール〟ではなく、〝つぶやき〟であっても。「小説」らしさに行儀よく収まるのではなく、手作りの斧であっても振り上げて。

 文学/小説がかろうじて「政治」に抵抗するとしたら、「ことばの力」を措いてない。その力が産んでくれる批評、諷刺、諧謔、皮肉、野次――の効用も活かして。そして、「民衆」の一筋縄ではいかないやさしさと知恵を恃みにして。

 

 そんなことを思いながら、この長編小説を書いた。(「あとがき」より)

 



●著者プロフィール

●磯貝治良(いそがい じろう)

1937年、愛知県知多半島に生まれる。77年より在日朝鮮人作家を読む会を主宰。同会の文芸誌『架橋』(現在まで32号)を編集発行し、小説のほか在日文学論を執筆。文学活動と併走して大学非常勤講師、在日コリアンとの協働を主とした社会運動、ボクシングトレーナーなどのサイドワークも。

著書に評論『始源の光――在日朝鮮人文学論』『戦後日本文学のなかの朝鮮韓国』『在日文学論』『変容と継承――在日文学を探索する』(近刊)、小説集『イルボネ チャンビョク――日本の壁』『夢のゆくえ』、長編小説『在日疾風純情伝』など。編著に『〈在日〉文学全集』全18巻。