●磯貝治良(いそがい じろう)
1937年、愛知県知多半島に生まれる。77年より在日朝鮮人作家を読む会を主宰。同会の文芸誌『架橋』(現在まで32号)を編集発行し、小説のほか在日文学論を執筆。文学活動と併走して大学非常勤講師、在日コリアンとの協働を主とした社会運動、ボクシングトレーナーなどのサイドワークも。
著書に評論『始源の光――在日朝鮮人文学論』『戦後日本文学のなかの朝鮮韓国』『在日文学論』『変容と継承――在日文学を探索する』(近刊)、小説集『イルボネ チャンビョク――日本の壁』『夢のゆくえ』、長編小説『在日疾風純情伝』など。編著に『〈在日〉文学全集』全18巻。
装画/入江比呂「食目人」(1979)
◆ 著 者 : 磯貝 治良
■内容紹介■
これは現実<リアル>か虚構<フィクション>か
この不気味で息苦しく理不尽な今日を
15年前から予見していた
必然で終わりのない虚実交錯の物語
「正義と夢の探検隊」の老若男女7人が
徴兵制復活をことほぐイエロー国の片隅から
「秘密のアベッコちゃん」に徒手空拳で立ち向かう!
文学/小説はどこまで政治に抵抗できるか? 坑道の地下深く分け入ってカナリアの役割を果たせるか? そんな問いがいよいよリアリティを帯びているのが、現今のこの国の政治状況のようだ。
いきなりモノ言いがうわずってしまったが、大上段に振りかぶって言いたいわけではない。「政治と文学」論議とかアンガージュマンとかの古証文をことさらに持ち出したいわけでもない。せめて虚構の力による腕試しくらいはしたい。〝シュプレヒコール〟ではなく、〝つぶやき〟であっても。「小説」らしさに行儀よく収まるのではなく、手作りの斧であっても振り上げて。
文学/小説がかろうじて「政治」に抵抗するとしたら、「ことばの力」を措いてない。その力が産んでくれる批評、諷刺、諧謔、皮肉、野次――の効用も活かして。そして、「民衆」の一筋縄ではいかないやさしさと知恵を恃みにして。
そんなことを思いながら、この長編小説を書いた。(「あとがき」より)